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小説 ピアノ 男 上原ひろみ [生と死のためのアート]

男の顔が急に輝いた気がした。その前に暗かったわけではないけれど、急に輝きを増したんだ。
「おれ、音楽は分からんけど」
ふんふん。
「昨夜は感動した」
何に?
「上原ひろみというジャズピアニストの番組を見たんだ」
おお!上原ひろみ!ぼくもアルバムはほとんど聴いている。
「ありゃあ、凄いねえ」

「音楽は分からない」という男の話が熱を帯びる。
ぼくまで嬉しくなって来るわけだ。なぜって、音楽が流れていないのに音楽の力を感じることができたのだから。
羨ましくもある。初めて聴いた人が顔を輝かせながら語らずにいられない芸術を創作できることが。
男は70歳。あらゆることを知っている人間なのだ。

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コメント 4

tromboneimai

彼女はすごいですね。
一緒に演奏してみたいです(笑)
by tromboneimai (2011-05-11 05:51) 

ねこじたん

知らない人をも魅了するって 素敵な力ですね
by ねこじたん (2011-05-11 08:59) 

cjlewis

知識をまったく持たず、感性で語られること、
ときに感動することがあります。
でも、その感性は、いろいろな経験を積み上げられて、
研ぎ澄まされた感性でなければいけない。
薄っぺら人間の薄っぺらな感性じゃいけない。。。
by cjlewis (2011-05-11 11:46) 

末尾ルコ(アルベール)

tromboneimai様

できたらすごいですね。(笑)

ねこじたん様

つくづくそう思いました。

cjlewis様

研ぎ澄まされていないと、いいものは分からないですよね。

                             RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2011-05-12 01:34) 

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