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実験小説「クズは死ね!愛する者は生きよ! 高知の奴と真奈子」 [実験小説「クズは死ね!愛する者は生きよ! 高知の]

「このおばさん、魚っぽいねえ」  沢田奴はテレビ部屋で母に語りかけたが、真奈子はlenovoの画面から目を離さない。 「深海魚っぽいがよにゃあ」  今度は独り言のように言う。  一階の窓からは月も夜空も見えない。  小さな通りを挟んで存在する家だけが見える。  沢田母子は住む古びた二階一戸建て貸家よりボロッちい家は、少なくとも前後左右四、五軒のの中にはない。 「また柴田かえ?」  真奈子の大きな情熱の一つが格闘技、プロレス観戦であり、二〇一六年三月現在、一番の贔屓が新日本プロレスの柴田勝頼だ。他にも気に入りのファイターは多くいるし、時期によって「最高の贔屓」は変わったりもするけれど、「今」は柴田勝頼なのである。しかし今夜はそうではなかったようだ。
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