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〈「言葉」による革命〉・・・●末尾ルコ「映画であなたの人生をより強靭に美しくする」講座~『淵に立つ』がカンヌで受賞した浅野忠信の「映画ファン、オタク」批判はどこへ向かっているのか?2017年3月30日 [「言葉」による革命]

●末尾ルコ「映画であなたの人生をより強靭に美しくする」講座~『淵に立つ』がカンヌで受賞した浅野忠信の「映画ファン、オタク」批判はどこへ向かっているのか?

浅野忠信のお話の続きです。

浅野忠信は2015年ブルーリボン賞主演男優賞受賞の際に、日本映画界の状況、そして「映画ファンやおたく」に対して批判した。

その時の内容の要約が次のようなものだ。

・・・・・・

「最近日本で賞をいただいたことなかったので、『俺は誰にも相手にされてないんだな~』」などと思っていた。
「友達の母親が自分の演技を見た時の反応」を最も大事にしている。

「映画ファンやおたくたちのオタク気質の反応などどうでもいい」

『友達のお母さん』は『俳優から出ている心』を見ている。

最近の映画界は「技術的なマニアックさ」に走り過ぎている。

・・・・・・

浅野忠信は現在の日本映画界、もっと言えば浅野忠信はデビュー以来日本映画界を支え、その価値を上げ続けてきた。
ほとんどテレビには出演せず、現在の日本で稀な「映画俳優」だと言え、さらにはハリウッドを含め、外国映画にも積極的に出演している。
その白眉と言えるのが、ロシアのセルゲイ・ボドロフ監督『モンゴル』。
『モンゴル』ではチンギス・ハーンを演じているが、暴力的なまでの映像の力の中の中心となった浅野忠信は、日本人俳優としてかつてなかった次元に踏み込んだと言える。

「素晴らしい作品」とは言い難いが、2011年には『マイティー・ソー』に出演。
言うまでもなく、『マイティー・ソー』は『アベンジャーズ』の主要キャラクターであり、この作品が世界中どれだけの人たちに鑑賞されるか、ぜひ想像してみてほしい。

2012年には、作品的にも興行的にも失敗作となったが、ハリウッド映画大作『バトルシップ』に出演。

2014年には主演した『私の男』で第36回モスクワ国際映画祭最優秀男優賞獲得。

2015年には主演作『岸辺の旅』の監督黒澤清が第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞。

そして2016年、主演作『淵に立つ』が第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で、審査員賞を受賞。

これは世界的に見ても「凄まじいキャリア」を重ねていると言えるわけです。

が、この日本社会の浅野忠信に対する関心の薄さはどうだ?

右に挙げた浅野忠信出演映画、『マイティー・ソー』以外はほとんどの日本人が存在すら知らない状況なわけです。

反面、連日大量のスポーツ報道、そして益体もないテレビドラマや「アイドル」の情報。

浅野忠信の言葉は「映画ファン、おたく」に向かっていたけれど、その向こうに広がる、「本物の文化芸術に目もくれない日本社会」に対しての言葉だと、わたしは受け取っている。

●原稿依頼などは、気軽にサイドバーのアドレスへご連絡を!

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