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●市川由紀乃でさえ困難な、「藤あや子そのもの」である「おばこ巡礼歌」。 [「言葉」による革命]

●市川由紀乃でさえ困難な、「藤あや子そのもの」である「おばこ巡礼歌」。

末尾ルコ「音楽の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

藤あや子の持ち歌の中でわたしが最も愛しているのが、「おばこ巡礼歌」だ。
この歌をフルオーケストラをバックに藤あや子が歌うと、演歌だ歌謡曲だという範疇を大きく飛び越え、現在の日本で考えうる、「人間によって行われる最高の表現」の一つとなる。
それは藤あや子の他の誰も真似できない歌唱はもちろんのこと、1秒単位で微細な感情を表現する、洗練され切った身体パフォーマンスとの連動で、わたしたちの魂は奪われるしかない。

市川由紀乃が藤あや子や坂本冬美より下の世代で最高の歌手の一人であることは疑いなく、今や「最初のひと声め」で観客の背筋を痺れさせる稀有な一人であることは、「歌が分かる人であれば誰でも「分かる」だろう。

しかしその市川由紀乃にして、「おばこ巡礼歌」は比較的「普通」に聴こえてしまう。

それほどまでに「おばこ巡礼歌」は「藤あや子」そのものと化していることを、ひとますここへ記しておこう。

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