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*「紙の月」と「カッコーの巣の上で」 [末尾ルコ(アルベール)より]

映画「紙の月」はまさしく原作を換骨奪胎し、さらに映画ならではの魅惑のひとつ、「主演女優(宮沢りえ)の美を浮き彫りにし、定着させる」を実現している。
原作では主人公 梅澤梨花の周辺人物の描写が比較的幅広く行われているが映画ではほとんどをカット。登場人物を梨花の勤める銀行関係にほぼ絞っている。その中で同僚役の小林聡美がやはりなかなかいい。
梅澤梨花は石橋蓮司演じる得意先の男性の孫である学生と愛人関係となり、彼に貢ぐために横領を始め泥沼にはまっていくのだが、証書の偽造シーンなど、言葉による説明を極力省き、それによっちて暴走する宮沢りえの失踪感が体感できて心地いい。そしてもちろん原作にはないクライマックスの「あのシーン」に「カッコーの巣の上で」を想起できるのは映画ファンならではのたのしみである。

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