小説・サワナミの永遠に報われぬ恋 7 [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]
ある日、9月くらい。
サワナミは昼食時でもないのに珍しく弁当屋の女のことを考えていた。
(もしあの女とつき合ったらどんな感じだろう)
サワナミの身長は175。女はおそらく150あるかないか。
サワナミがそれまでつき合った女はだいたい160前後だった。
慎重が25cm低い女と歩いている自分を想像すると口元が緩む。
(子どもと歩いていると思われるかもしれないな)
しかも女がハイヒールをはく姿が想像できなかった。
(そう言えばあの娘、どんな服を着るんだろう)
サワナミは昼食時でもないのに珍しく弁当屋の女のことを考えていた。
(もしあの女とつき合ったらどんな感じだろう)
サワナミの身長は175。女はおそらく150あるかないか。
サワナミがそれまでつき合った女はだいたい160前後だった。
慎重が25cm低い女と歩いている自分を想像すると口元が緩む。
(子どもと歩いていると思われるかもしれないな)
しかも女がハイヒールをはく姿が想像できなかった。
(そう言えばあの娘、どんな服を着るんだろう)
小説・サワナミの永遠に報われぬ恋 7(これは6ではなく、7でした) [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]
「こんにちは」
弁当屋のドアを開けると女の顔が輝くのが分かる。
狭い店内。昼でも少し暗い。
女は仕事中、いつでも白いショートパンツを履いていた。
バランスは悪くない。
しかし背の低さから、いくらか頭でっかちに見える。
声はとても細くやや高く、それはときにサワナミを苛立たせた。
ある日、9月くらい。
サワナミは昼食時でもないのに珍しく弁当屋の女のことを考えていた。
弁当屋のドアを開けると女の顔が輝くのが分かる。
狭い店内。昼でも少し暗い。
女は仕事中、いつでも白いショートパンツを履いていた。
バランスは悪くない。
しかし背の低さから、いくらか頭でっかちに見える。
声はとても細くやや高く、それはときにサワナミを苛立たせた。
ある日、9月くらい。
サワナミは昼食時でもないのに珍しく弁当屋の女のことを考えていた。
小説・サワナミの永遠に報われぬ恋 6 [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]
サワナミは弁当屋の女を「愛した」と思ったことは一度もなかった。
恋した女の中には「愛した」と信じた女も何人もいる。
恋が終わった後にどんな感想を持ったかは別にして。
弁当屋の女は
サワナミが恋した女の中で一番背が低く、
一番ライトな感覚で「恋」を感じた女だ。
もう一つ。
一番肌の肌理が細かな女でもある。
ひょっとしたら
女の肌に恋をしていたのかもしれない。
それだけ繊細な肌をしていた。
恋した女の中には「愛した」と信じた女も何人もいる。
恋が終わった後にどんな感想を持ったかは別にして。
弁当屋の女は
サワナミが恋した女の中で一番背が低く、
一番ライトな感覚で「恋」を感じた女だ。
もう一つ。
一番肌の肌理が細かな女でもある。
ひょっとしたら
女の肌に恋をしていたのかもしれない。
それだけ繊細な肌をしていた。
小説・サワナミの永遠に報われぬ恋 5 [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]
サワナミは結局、弁当屋の女の名前を知らずに終わる。
今のところ他の弁当屋の女に恋したことないのだから、
サワナミの中では「弁当屋の女」で通ってる。
弁当屋の女に恋した期間は、
あいまいな記憶によれば、約半年。
けれど、その期間ずっと女を想いつづけていたわけでは、もちろんない。
たまに思い出していた。
思い出すのは必ず「昼食を何にしようか」と思案するときだった。
今のところ他の弁当屋の女に恋したことないのだから、
サワナミの中では「弁当屋の女」で通ってる。
弁当屋の女に恋した期間は、
あいまいな記憶によれば、約半年。
けれど、その期間ずっと女を想いつづけていたわけでは、もちろんない。
たまに思い出していた。
思い出すのは必ず「昼食を何にしようか」と思案するときだった。
小説・サワナミの永遠に報われぬ恋 4 [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]
サワナミの思い出す恋は一つずつ。
誰かに尋ねられたときでなく、
食事中、入浴中、散歩中、寝入る前、
ひとりでに立ち昇ってくる。
そして今日は歯をブラッシングしているときに現れた。
弁当屋の女。
しかしその弁当屋はもうない。
女がいた弁当屋は、
できたばかりのおかずを並べ、
バイキング形式で客が好きなものを仕切りのついた
トレイに入れていくやり方の店だった。
女は小さかった。
これだけ小さな女に恋をしたことは、
小学校のとき以来初めてのことだったし、
その後もない。
サワナミが恋した最小身長記録保持者が
弁当屋の女なのだ。
誰かに尋ねられたときでなく、
食事中、入浴中、散歩中、寝入る前、
ひとりでに立ち昇ってくる。
そして今日は歯をブラッシングしているときに現れた。
弁当屋の女。
しかしその弁当屋はもうない。
女がいた弁当屋は、
できたばかりのおかずを並べ、
バイキング形式で客が好きなものを仕切りのついた
トレイに入れていくやり方の店だった。
女は小さかった。
これだけ小さな女に恋をしたことは、
小学校のとき以来初めてのことだったし、
その後もない。
サワナミが恋した最小身長記録保持者が
弁当屋の女なのだ。
小説・サワナミの永遠に報われぬ恋3 [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]
恋をした、いや、
恋をするということならサワナミほど
それが多い男は珍しいかもしれない。
サワナミは恋をしすぎるのか。
さから永遠に報われぬ運命を背負ってしまったのか。
サワナミ自身は
自分の恋を順序立てて思い出すことなど
もはやできない。
「君の恋の思い出を話して」と尋ねられても、
それはあまりにも多く、
そしてそれは一年に数百本映画を観ているシネフィルに対して
「君の好きな映画を3本挙げてみてくれ」
と問いかけるのにも似ていた。
恋をするということならサワナミほど
それが多い男は珍しいかもしれない。
サワナミは恋をしすぎるのか。
さから永遠に報われぬ運命を背負ってしまったのか。
サワナミ自身は
自分の恋を順序立てて思い出すことなど
もはやできない。
「君の恋の思い出を話して」と尋ねられても、
それはあまりにも多く、
そしてそれは一年に数百本映画を観ているシネフィルに対して
「君の好きな映画を3本挙げてみてくれ」
と問いかけるのにも似ていた。
小説・サワナミの永遠に報われぬ恋 2 [小説 サワナミの永遠に報われぬ恋]
サワナミが恋をした相手は、みんな不思議なタイミングで消えてしまう。
消え方にはいろいろあるけれど。
笑ってしまうほど、
「ええ」と声に出したくなるほど、
絶妙のタイミングで消えてしまう。
涙さえも出ないタイミングで。
消え方にはいろいろあるけれど。
笑ってしまうほど、
「ええ」と声に出したくなるほど、
絶妙のタイミングで消えてしまう。
涙さえも出ないタイミングで。