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小さな小説集 正気と狂気の間 ブログトップ
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君夫の決断 [小さな小説集 正気と狂気の間]

君夫は(彼女がいようがいまいが、あんたにゃ言いたくないよ)と思いはしたが、一瞬の決断を迫られた。
本当に答えずに置くべきか否か?
答えなかったとき大塚はどのような反応を見せるか?どんな表情を見せるか?
答えないとして、「どのように答えない」ようにするか?
「それはプライバシーだからちょっとお答えできません」・・と言いたいところだが。

「彼女いるんでしょ?」
間を置いてしまった君夫に、大塚のタバコ臭い顔がさらに近づく。
「え・・ええ、まあ・・」
言ってしまった、やはり君夫は。
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ヤマダ電機の地方中小食品会社社員磯部 4 [小さな小説集 正気と狂気の間]

地方中小食品会社社員磯部は(別に君の事なんかに興味はないんだよ。このレジが一番近いから来ただけさ)という表情を浮かべ、「これを」と言いながら「1980円」と書かれた二枚刃のシェーバーの券を渡す。
レジのスタッフは微笑みを浮かべ、「ありがとうございます。7980円です」と言う。
(7980円??)
凍りついた磯部。股間も縮みあがる。
(7890円??)
どうやら磯部は「7」と「1」を見間違えたようだ。
しかし目の前にいるのは見目麗しい女性、どうして磯辺に「あ、値段間違えました、これ止めます」などと言えよう。

思わぬ散財をした磯部。
その日が最悪の日曜日の一つになったことは言うまでもない。

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ヤマダ電機の地方中小食品会社社員磯部 3 [小さな小説集 正気と狂気の間]

地方中小食品会社社員磯部の給料はずっと上がっていない。
ボーナスも出ない。
よって裕福ではない。
だから磯部の目にとまったのは「1980円」と書かれた二枚刃のシェーバーだ。
(安い!)
磯部は嬉しくなった。心が高揚した。
そしてあらかじめ目を付けておいた、いくらか見目麗しいスタッフのいるレジへ駆けつける。

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ヤマダ電機の地方中小食品会社社員磯部 2 [小さな小説集 正気と狂気の間]

さてやっとヤマダ電機へ行くことのできた磯部。
日曜だから大混雑だ。
けれど土日祝祭日だけにやって来る若い女性スタッフの姿を眺めながら、磯部は悪い気分じゃない。
好みのタイプのスタッフがいたら用もないのに近寄ってしまう磯部に「自分は弱い」という自覚はない。
地方中小食品会社の古びて小汚い事務所と比べ、なんと華やいだスペースだろう・・磯部の気持ちはワクワクする。
しかし楽しいからと言っていつまでもいることはできない。
この日、磯場はシェーバーを買いに来たのだ。
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ヤマダ電機の地方中小食品会社社員磯部 1 [小さな小説集 正気と狂気の間]

地方中小食品会社社員磯部は9月の日曜、ヤマダ電機へ行った。
久々のヤマダ電機だ。
地方中小食品会社は忙しいけれどまったく給料は上がらない。
ボーナスが出たのはもう大昔の話でほとんど伝説化している。
だからヤマダ電機へもっと行きたいのだけれど、なかなか行く暇がないのだ。
「ヤマダ電機へさえ行く暇のない地方中小食品会社社員」・・これは日本の現実の一つである。

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「彼氏いる?」 [小さな小説集 正気と狂気の間]

莉子の前に顔を突き出してきて、山下浩太郎は尋ねた。
「どう?彼氏いる?」
莉子は思った。
(彼氏がいようがいまいが、あんたにゃ言いたくないよ)
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「彼女いる?」 [小さな小説集 正気と狂気の間]

公雄の前に顔を突き出してきて、大塚真治は尋ねた。
「どう?彼女いる?」
公雄は思った。
(彼女がいようがいまいが、あんたにゃ言いたくないよ)
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地方中小食品会社社員磯部、カフェで苛立つ。 [小さな小説集 正気と狂気の間]

佐野の性格は分かっている。
横柄さは仕事上の持ち味の一つでもあるのだろう。
ある同僚と飲んでいるときに、「佐野さんって、皆が思ってるような人じゃないですよ」という話をされたこともある。
佐野について「皆が思っている」のは、傲慢、横柄、不遜・・。
(その通りじゃないか。どこが「皆が思っている人じゃない」んだ)
磯部はさっきから苛立っていた。
佐野のでっぷりと肉のついた顔、銀縁の眼鏡の舌の細く陰湿な眼、そして今日の自分をゴミのように見下した怒鳴り声。
それだけではない。
先ほどから座っているカフェで浮かれて騒ぐ若い連中の醜さに、苛立ちは頂点に達しそうになっていた。

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怒鳴られた地方中小食品会社の社員磯部の叫び [小さな小説集 正気と狂気の間]

(なんでおれが・・)
磯部はハンドルを叩いた。
エアコンを入れても真夏の暑気は容易に車中から去らない。
(あの、ボケが。ボケが、ボケが、ボケが・・)
心中の叫びは徐々に体外へとこぼれ出る。
「ボケ、ボケ、ボケ!!!死ね、死ね、死ね!!
が~~~~~~~~------!!!
が~~~~~~~~~~~~~~~~~~-------!!!」
真昼間の仕事時間に叫んでいるからと言って、磯部が完全にキレているわけではない。
車外に声が出ないと理解した上で叫んでいる。
もし急に知人が前を通ったりしたら、すぐさま笑顔を作ることができるだろう。
磯部も会社勤めがずいぶん長くなるわけだから。
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地方中小食品会社の副社長佐野の給料と電話 [小さな小説集 正気と狂気の間]

その時間、佐野は忙しかった。
電話が鳴った。
出ると、部下の磯部だった。
(なるほど、磯部か)
そう自覚的に思ったわけではない。
しかしもはや佐野の本能が「自分より上か・下か」を瞬間的に判別する。
「何じゃお前、おれ忙しいんじゃ。こんなときにかけてくるな、ボケ!」
ガシャン。
少しだけ、佐野の心に満足感が拡がる。
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