試合前、オクタゴンの中で軽くジャンプを繰り返すアンデウソンはずいぶんナーバスな表情に見えた。
対してフォレスト・グリフィンはリラックスしている。アンデウソンよりも一回り骨も肉も太いその体にさしたる緊張は見えない。
しかし試合が始まってすぐ、2人の様相は一変してしまった。
明らかに体格で勝るグリフィンの攻撃がアンデウソンに当たりそうな気がまったくしないのだ。
対してアンデウソンは肩の力を抜いたパンチを的確に入れていく。
最後は衝撃だ。
アンデウソンの軽いジャブ。しかもそれは遮二無二突っ込んで来るグリフィンの攻撃をバックしてかわしながら当てたものだ。
まったく肩の力を抜いたパンチ。それを食ったグリフィンは大の字になった。

武道の世界で「見切る」という言葉があるが、まさに「見切った者」と「見切られた者」を目の当たりにした試合だった。
「見切った者」が普段下の階級で戦うファイターだけに、この試合は格闘史に残る鮮やかなものとなった。