5月1日の月。
曇り空に月があった。
ぼくはおそらく、晴れの日の月よりも曇り空の月の方が好きだ。
雲の状態にもよるが、晴れの夜よりも曇りの夜の方が狂おしいだろう。
ぼくはつまり、「普通」よりも狂おしい方が遥かに好きなのだ。
狂おしくない人生なんて、多分想像もつかない。

さて5月1日の月。
実はそれほど狂おしくはなかったが、妙に笑っていた。
声を出さず、しかし微笑でもなく、かなり快心の笑みを浮かべていたのが、その晩、さほど狂おしくない曇り空の月だった。