心ならずも「支払い」をしてしまったわたしは肩を落とし、ため息をつきながら視力検査へと進む。
(せめて素敵な女性でもいないかなあ~)
などと思ってみても、運転免許センターにそうそう魅力的な女性などいないということは、冬に歌っている蝉がいないと同様に自然の摂理なのだった。(ホントか? 笑)
窓の外で蝉が鳴いている。
(それにしてもボロい建物だなあ・・)
古びた教室、薄汚れたトイレ。
(せめて建物が高島屋新宿店くらいだったらなあ・・)
などと思ってみて余計に空しくなった。
蝉の鳴き声が「あほ~あほ~」と合唱しているように聴こえる。
(ふん、あほ~じゃないよ。「素敵なバカ」さ)
と心で少しだけ悪態をついても虚しさが去るいことはない。
「あの、あなた。そっちじゃなくて、こちらの教室」
後ろから職員の男に声をかけられる。
やや愛相のいいスルメのような男だ。
(ああ、場所さえ間違うとは・・。おれの人生こんなものかねえ)
いや、そんなはずはない。
まだまだやれるはずだと自分を叱咤する素敵なバカ(美の探究者)。
(そう、あのドアを開ければ違反者講習を受けに来た仲間たちが待っているんだ!)
ガラッ!
ドアを開けたその先に見えたものは・・。

つづく