映画に関して従来よく使われる表現に、「映画全部観るよりも予告編の方がおもしろかった」というものがある。現実的にはそんなこともあるし、そんなことはない場合もある、と当然の結論となるが、逆に言えるのは、確かに昔はおもしろい予告編が多かったという印象が強い。
なぜわざわざこんなことを書くのかというと、
最近「つまらなさそうな予告編」なのに本編は実におもしろかった、というケースがいくつかあったからだ。
例えば韓国映画「クロッシング」。肺結核の妻に薬を買うために北朝鮮から中国へ脱出する夫。そして父を追って単身旅立つ少年を描いた作品だけれど、映画的興奮に満ちた非常に満足できる内容だった。ところが予告編ではまるでショボい「泣かせの親子物」という印象しか受けなかったのだ。
同様に、音楽・ロシア・パリを見事に描いたフランス映画「オーケストラ」も、予告編では妙に貧乏臭い映画にしか見えなかった。
宣伝担当の人もいろいろご苦労があるのだろうが、せっかくの素晴らしい映画、ちょっと常識を踏み外すくらいのエキサイティングな予告編を作っていただきたい。