マルグリット・デュラスの文体は多く抽象的でかつ明晰、といった特徴も忘れるほど厳しい美しさに満ちている。その美しさに陶然として、時に物語を忘れてしまうことさえあるほどだ。
しかしデュラス自身が言うように、幼いころから格別にリリカルな美しさを誇っていた彼女の美貌は若くして失われる。
外見上美しきマルグリット・デュラスは、彼女の人生のほんの4分の1程度の期間だったろうか。
ヤン・アンドレアと出会った頃のマルグリット・デュラスは、おそらく彼女の偉大さを知らぬ人間が見たら、一人の老いた婦人に過ぎなかっただろう。
ヤン。アンドレアはデュラスの姿に何を見たのだろう。