そうさね。
わたしの隣のテーブルに着いた男は本を読み始めたのさね。
別に男が何を読もうと興味なんてあるはずないさね。
でもね、目に入ってしまうことがあるのさあ。
目にしたくないものでもね。
わたしだってずっとPCを正面から凝視しながら時間を過ごすわけじゃない。
時に目を左右へ逸らしたり上を向いたり・・。
そうしている時に、目に入ったのさ、男の呼んでいる本が。
どうやらその男、「人生のマニュアル」的な本を読んでいるようだった。
(そんな本を読んで人生が好転した人間なんか知らないよ)などとわたしが思っている間もなく、男は開けたんだ、「恋愛」というページを。

そうさね。
一人飲食店で「人生のマニュアル」的な本の「恋愛」というページをじっくり読み始めるような男がモテたなんて話、ついぞ聞いたことないよ、とその男に言いたかったけど、言わなかったよ。
わたしもそんな暇人じゃないからね。