あなたが窓の外を歩いて来た
あなたとすぐに気づいたけれど
どこか一瞬ぼうっとしてしまうような
不思議さがその姿にはあった

あなたは日傘をさしていた
日傘をさして歩いて来た
夏のような暑さになってから
二日目のことだった

あなたは「奥さん」ではもちろんないけれど
浮かんだ言葉は
「子犬を連れた奥さん」だった

わたしの人生で初めて
誰かを見てこの短編小説のタイトルが
誰かを見て浮かんだ時間だった