口語訳でデモーニッシュな魅力には欠けるが、「ほぼ全作品」と「主要な手紙」が文庫に入っているのは貴重だ。
各ページの下部に丁寧な「注」があり、口語訳も含めてランボー初心者にはもってこいの本だと言える。
とりあえず、ランボーにしては平明な次のフレーズを紹介しよう。

時を打たない時計がある。
白い生き物の巣を抱えた窪みがある。
降りてゆく寺院と昇ってゆく湖がある。
雑木林の中に打ち棄てられた、あるいはリボンを飾って小道を駆け下る、小さな車がある。

                         アルチュール・ランボー 宇佐美斉訳