ユディトだけでなく、欧米の神話や聖者伝には「救国の女」あるいは「受難の女」というイメージが多く登場する。
その最たるものがジャンヌ・ダルクのエピソードだろうが、あれは比較的新しい時代(1431年ジャンヌ火刑に)でしかも「救国」と「受難」の双方を兼ね備えているという「歴史上の軌跡」とさえ言えるものだった。
ジャンヌ・ダルクのエピソードが歴史的に存在することがフランスに「特別な国」のイメージを付与している一因なのは間違いないだろう。

さらに遡れば、聖バルバラの美しい聖女伝がある。
塔に幽閉された少女という美しくも倒錯的なイメージは、ヤン・ファン・エイクを始めとして多くのアーティストの想像力を揺さぶり続けている。