架空情景

ついにリング上に山路徹が登場する。
風貌に似合わぬ妙にデリケート風な口調で、

「ダメだよ君たち、いくらぼくが魅力的だからってそんなに喧嘩しちゃあ。ピースだよピース、世界にピースを、だよ」

大桃

「と、徹さん!嘘だと言って!わたしたちが正式に離婚する前からこのエセ知性派タレント麻木久仁子とデキてたなんて、嘘だと言って」

山路

「美代子、心配しないで、君だって立派なエセ知性派タレントさ!おっとそんな話じゃなかったねえ。今から優しい嘘をつくね。そう、ずっと愛してたのは君だけさ」

麻木

「徹さん!優しすぎること言わないで!あなたはずっとわたしのことを愛していたはず!」

山路

「そうさ、久仁子。ずっと前から君だけを愛していたよ」

大桃と麻木、睨み合ったまま動かず。

山路

「ああ、君たちには残酷な沈黙を強いて来たねえ。
残酷な沈黙。
残酷な沈黙。
ふふふ、こんな文学的表現でエセ知性派タレントなんてイチコロなのさ。
おれって罪な男。
ああ、しょうがないなあ、

二人とも、愛してる!」

その時山路の頭上にそのまんま東が落下して来た。
そして言うのだった。

「来年の都知事選はよろしく!」

見事な茶番劇である。