ぼくはかつて猫たちを飼っていた。
ぼくがかつて住んでいた古い家で。
多くの猫たちがいて、それぞれがぼくに物語をくれた。
それは哀しい物語であることも多かったけれど。
哀しい物語も楽しい物語も、何もないよりはいい。
ぼくはいずれ猫たちの物語を語り始めるだろう。
庭を駆け回っていた姿。
障子を破る姿。
ミルクを舐める姿。
日だまりで憩う猫たちの姿は、日だまりの光を泉のようなたゆたいに変えていた。

ぼくはいずれ飼っていた猫たちのことを語り始めるだろう。