感じのいい行員は歌い終わると同時にキッとぼくの方を向き直った。「わたしをこんな女にしてしまったあなたって酷い人・・」ぼくは首を捻った。(ありゃりゃ、ぼくはこの行員に会うのは今日で二度目じゃなかったっけ。不思議なことを言う人だ)しかし行員は身悶えせんばかりに泣き始めるのだ。「酷い酷い、あなたって酷過ぎる・・」ぼくはどうすればいいのだろう。窓の外で極楽鳥が羽ばたいている。「君君」振り向くと佐分利信を小柄にしたような男が立っている。どうにも辛気臭い顔したその表情がぼくの癇に障った。「なんだあなたは、お客に対して無礼じゃないか!」「君こそ何だ、うちの感じのいい行員を泣かしてもらっちゃあ困るなあ」「む?勝手に泣いたのはこの人だよ、ぼくの咎じゃあない。咎め立ては筋違いってもんさ!」