「オーケストラ」(ラデュ・ミヘイレアニュ監督)という映画はほとんどのシーンに比較的地味なロシア人の俳優が使われていて、地味ながらもちろん場面を引っ張る力は十分あるけれど、それでもやはり地味だという印象が残るだろう、彼らだけで終始すれば。しかし「オーケストラ」にはメラニー・ロランが登場する。迫害されたロシアのオーケストラメンバーを描く際のモノトーンなイメージと対象的に、メラニー・ロランが映った瞬間に金色の光がフィルムの中から湧き出たような気がする。まるでメラニー・ロラン一人にパリの持つ華やかさや理知、奥行きなどを託しているかのように。これが映画女優だ。