一番好きな女優がジュリー・デルピーだったことがある。その頃ジュリー・デルピーは他に類のない美しさで、あたかも映画に最も愛される女優の一人に見えた。豊かで上品な金色の髪と蒼白の顔。何を見ているのか何を考えているのかまるで想像がつかない無表情が勝った相貌。非日常そのものの存在は、光と蔭の中間地点から生まれ出た異邦人を想わせた。
しかし、それはフランス映画の中でのことだ。
アメリカを主要な活躍の場に選び、ジュリー・デルピーは神通力を失った。
確かに「キリング・ゾーイ」や「恋人までの距離」を愛するファンもいるだろう。
けれど非日常が無理に日常の中に溶け込もうとし、デルピーは結局非日常の光輝を失った。

フランス映画時代。
「天使の接吻」「汚れた血」「パッション・ベアトリス」「白の愛」「ゴダールの映画史」…。
呆れるほど美しいジュリー・デルピーは今でもわたしたちの前に姿を現すのだけれど。