ブロック・レスナーは試合前から明らかにナーバスになっていた。
長いブランクを経ての復帰戦だということもあるだろう。
「引退か現役続行か」を賭けた試合だったということもあるだろう。
しかしそれ以上にレスナーには「アリスターにはとても敵わない」という確信めいた気持ちがあったのではないか。
様々な資料を研究したうえで、「必ず負ける」と確信するに至ったとわたしは思うのだ。
ただ、「負ける」と予測しても、試合が始まるまでは「ひょっとしたら」という気持ちがどこかに残っているはずだ。
そんな淡い希望も試合開始と同時に消えて無くなる。
オクタゴンで実際に対峙したアリスター・オーフレイムは、ブロック・レスナーの人生でまったく経験したことのない「怪物」に見えたのではないか。