9年連続200本安打を達成し、ファーストベースに立ったイチロー。
その表情は今まで見たどんなイチローとも違っていた。
「クール」なんていうものではない。
重苦しい、そう、ずっと何年間も重苦しく垂れこめていた不自然なまでに厚く暗い雲が一気に晴れたような明るさのある顔。
ヘルメットをとり、閑古鳥の鳴くテキサスのスタンドに対し挨拶をするイチロー。
わたしにはイチローの目が潤んでいるように見えた。
年間安打記録を塗り替えたときは超満員の地元セーフコフィールドだった。
今回は敵地テキサス。
しかも数日間降り続く雨で順延を繰り返し、観客の入りはすこぶる悪い。
そんな悪条件さえも、新しい次元へと至る通過儀礼と考えれば美しい。