伊勢丹新宿の地下で突然現れた哀しみ。
実はその「哀しみ」の理由なんて自分が一番よく分かっているんだ。
それが色とりどりに押し寄せる洪水のような商品群によってことさら浮かび上がったのだろう。
「人間は哀しい存在です」などという力が抜けそうになる表現をわたしは好まない。
しかしわたしが「君」を好きだという感情を止めようがないのと同じように、「哀しい」という感情を捨て去ろうとしても突如として表れる、これも止めようがないのだ。
「哀しみ」に色はない。
だから煌びやかな場所へ来ると、それはくっきりと浮かび上がり、ときにわたしという人間の範囲を超える。