気が付いたら4月。感じのいい行員を見たのは3月。いつの間に1カ月も経っていたのだ。
「四月だもの、3月よりもいい光が入って来ますね」ぼくはそう言った。「お客様、今〈四〉は漢字で、〈3〉はアラビア数字で言いましたね」案外なことを言いだす行員だ。地方銀行とは言えけっこう偏差値の高い大学を出ていそうだな。でも偏差値なんて超感覚とは何の関係もないはずさ。ぼくは超感覚を身に着けるために長年修業を積んで来た。「君、行員さん、ぼくの口にした言葉がどんな文字か分かるのかい。なかなかのものだね。ぼくと超感覚合戦でもどうだい」すると行員、「あら、新手のナンパってやつですの?」などと言う。そうしてぼくたちは陽光に満ちた某銀行の中でハーモニーを奏で始めたんだ。「男と女は持ちつ持たれつほいほほい。しなだりかかられ、こりゃ不思議。カリマンタンは海の上♪」