さて「ブラック・スワン」冒頭、「白鳥」となったナタリー・ポートマンが登場するわけだが、かなりの訓練期間を経て「バレリーナ」の動きを身に付けたというポートマンだけれど、バレエファンであれば瞬間的に「あ・・」と思ったはずだ。「腕の動き」が、さらにそれ以前に、「二の腕の太さ」が「白鳥の湖」で主役を踊るバレリーナのそれではまったくないのだ。要するに、細身のポートマンの二の腕でもまだ太すぎる。そして動きがあまりに鈍すぎる。いや、もちろん一年や二年の訓練で本物のバレリーナの動きを身に付けられるわけもなく、そんなことを望むべきでもないわけだけれど、一部でナタリー・ポートマンのダンスシーンに関する議論があるらしいから、わたしの観た感想を述べているに過ぎない。これを読んだ中で、「バレリーナってそれくらい凄いんだ」と思ってくれる人がいれば幸いだと思う。
伝統ある一流バレエ団で「白鳥の湖」の主役を任されるようなバレリーナの踊りは、それはそれは凄いもので、いわば「超人」的な存在までに達している。彼女たちの踊りは、「腕の動き」だけでも呆れるほど戦慄的で、例えばスヴェトラーナ・ザハロワやルシア・ラッからクラスとなれば、両肩から先はまるで「別の生き物」が動いているように見えるほどなのだ。