ところで歴史的傑作とされるF・W・ムルナウの「吸血鬼ノスフェラトゥ」だけど今観ると怖くないというか、どちらかと言えば愛嬌があるんだな、ノスフェラトゥが。これはもちろん映画公開当時には衝撃的な映像だったわけで、現在の尺度で解釈すべきではない。でもモノクロサイレント映画で今観ても怖い映画もあるんだけれど、それに当時他に多くの刺激性芸術・エンターテイメントが少ない中で、映画館の暗闇に包まれ有り得べからざる怪奇な容貌の吸血鬼を目撃したという衝撃はいかほどのものだったろう。そりゃあ人生観が変わるほどの衝撃でしたろうなあ、うんうん。でもヘルツォークの「ノスフェラトゥ」でクラウス・キンスキー演ずる吸血鬼も初めて観た時にはちょっと正視しかねるほどの不気味さを感じたものだけれど、何度も鑑賞を繰り返すに従ってじょじょに「愛嬌よし」に見えて来たりしたもんだ。これはいいことか悪いことか?(笑)