●リドリー・スコット監督の映画「悪の法則」についてです。
大筋は、有能な弁護士が美しきフィアンセのために「大儲け」しようとして悪の世界の泥沼へ入り込む。
ディテールはやや複雑で、一度観ただけでは話がよく分からないという人もいるでしょう。
しかし「悪の法則」の魅力は「ストーリーがおもしろいか否か」ではない。
りドりー・スコットが造形する映像の持つ濃厚な魔力に酔い、名だたる現代最高のスター俳優たちの持つ濃厚なエロスとタナトスに酔う。
わたしは「悪の法則」をそんな風に愉しみました。
原題は「TheCounselor」。
邦題「悪の法則」はいかにも抽象的ですが、観終わったらよく合ったタイトルだという気がした。
エロスとタナトス、そして「悪」の薫りが充満しているんですね、映画そのものの中に。
ストーリー上のみでいかに凄まじい悪を描こうとも、映像から、そして映画そのものから「悪」が香って来ないことには映画として成功しているとは言えない。
そこに映画監督の力量がある。
そして心地よくハードボイルドな雰囲気に浸れる映画としても「悪の法則」は貴重な作品です。
かつてのハリウッドはハードボイルド的映画がよく作られていたものですが、近年はアメリカにおいても深刻な観客の幼児化などの影響により、CG多様の大作中心に観客が押し掛けるようになった。(言うまでもなく、「幼児化」は日本の方が遥かに深刻ですが)
その代わり、米国のテレビシリーズで刑事物、探偵物、サスペンス風なものが多くありますが、全然物足りないんです。
圧倒的なクオリティのハードボイルド映画としての「悪の法則」を、ぜひ!