洋画の俳優としてはアラン・ドロンの知名度が圧倒的だったが、映画館で観たスターの名前として覚えたのがスティーブ・マックイーンとポール・ニューマン。『タワーリング・インフェルノ』には度肝を抜かれた。この作品を観たおかげで私の映画ファンとしての人生が始まったのだ。(こんなおもしろいものがこの世に存在するのか!)と呆れかえった。そして無知な田舎のジャリならではの決め付けで、(今後『タワーリング・インフェルノ』以上の映画には絶対に出会えまい)と天に向かって断言した。そして『ジョーズ』を観に行く直前にも嘯いたものだ、「『タワーリング・インフェルノ』よりおもしろいなんて、絶対あり得ない」と。思えばこの時わたしはもっと真摯に、「この世界に〈絶対〉などあり得ない」という真理を胸に刻むべきだったのである。