実は咲夫が工場に勤務をしている自動車メーカーN社は
半月前に1000人以上の人員削減予定を発表していた。

それからだ、
咲夫がテレビとスポーツ欄以外も開くようになったのは。

開いてはみたが、理解できる見出しは少なかった。
その中で「削減」「赤字」は数少ない理解できる言葉だったから、
より生き生きとした姿となって咲夫の意識に飛び込んできた。