(なんでおれが・・)
磯部はハンドルを叩いた。
エアコンを入れても真夏の暑気は容易に車中から去らない。
(あの、ボケが。ボケが、ボケが、ボケが・・)
心中の叫びは徐々に体外へとこぼれ出る。
「ボケ、ボケ、ボケ!!!死ね、死ね、死ね!!
が~~~~~~~~------!!!
が~~~~~~~~~~~~~~~~~~-------!!!」
真昼間の仕事時間に叫んでいるからと言って、磯部が完全にキレているわけではない。
車外に声が出ないと理解した上で叫んでいる。
もし急に知人が前を通ったりしたら、すぐさま笑顔を作ることができるだろう。
磯部も会社勤めがずいぶん長くなるわけだから。