アリーナ・コジョカルAlina Cojocaruの武器は「ため」である。
ポーズを極めるとき、あるいはちょっとした所作のときも、「ここで魅せる」と思うときには「ためにためる」。
コジョカルが「ため」を最大限に発揮できる演目の一つが「ドン・キホーテ」だ。
お転婆な村娘のキトリはコジョカル本人の個性とはずいぶん違いそうだが、彼女の「くどい」までの「ため」をこれだけ堪能できるバレエはない。
そもそもプリマバレリーナとしては特別小さなコジョカルが磨いてきた「ため」や「デリケートなタッチ」だ。
それは凄みすら感じさせる芸術であり、最高の「芸」にまで昇華している。