キリスト教には多くの「聖人」が存在する。
近現代の聖人はともかく、中世以前の聖人伝には、あくまで「伝説」というカテゴリーに類するものが多い。
しかしとても事実とは考えられない聖人伝が、素朴な民衆から最高の芸術家まで、長い月日に渡って魅了し続けている事実を軽視してはならない。
中でも屈指の美しさを持つ聖人伝が「聖女バルバラ」に関するものだ。

三世紀の小アジアの伝説的な聖女バルバラのシンボルは塔。バルバラがキリスト教に感化されることを恐れた父が、彼女を塔に閉じこめたのですが、バルバラは修行僧と密かに連絡をとって教えを乞い、塔に三つの窓(三位一体の象徴)を作り信仰を表明しました。

                     「聖母のルネサンス」石井美樹子