「こらあ!」「え?コラーゲン?」
男は女の顔を覗く。(ベイビー、お前って奴は、そんなにもコラーゲンのことを・・)
「コラーゲンなら昨夜たっぷり摂ったわ」
女は無理な笑顔を浮かべる。
男の心は少し痛む。こうまでも女の心の傷は深いのかと、男の心は緩やかに痛むのだ。
「ベイビー、そんなにコラーゲンなんか摂らなくったって・・」
「ニュースで読んだわ。17型コラーゲンの不足が脱毛や白髪を促進しているらしいわね」
笑顔の奥の泣き顔が見える。
「でも17型コラーゲンは・・」
「ほら、あなたのために、こんなにお肌がうるうるに・・」
窓の外には道玄坂が見える。10代と思しいカップルが歩いている。
(17型コラーゲンが商品化されたなんて話は聞かないし、そもそもコラーゲンの経口摂取は効果があるんだろうか・・)
などと思いながらも男がその答えを持っているわけでもなく、哀しそうに見えないように気を配りながら女に笑顔を向けている。