●『驚異のはちきん小説!「はちきん」と呼ばれる女』その20。

「黙らんかね!」
 と怒鳴った山の中椅子子だが、いつも通り教室がすぐに静かになることはない。そもそもクラスに騒擾状態をもたらす最右翼である田川猿蔵が容易には黙らない。
「けんどセンセー!そんなちんまい女、連れて来て!そんなことするセンセーの方が悪いわえ!わあっはっはっはあ!」
 ここで少々「現在土佐弁講座」をしてみよう。「ちんまい」の意味は「小さい」であり、ほぼ同義の言葉として「こんまい」も使われる。
丘メヒー子を「ちんまい」と囃し立てる田川猿蔵自身、男子生徒としては学年でも一、二を争うほど「ちんまい」のであるが、本人もそれを十分分かっているだけに、「ちんまい」に関してはより敏感になっているわけだ。
 山の中椅子子に慣れきっているパパイヤ組が騒がしくなれば容易には収束しない。さらにその日は「丘メヒー子が来た」という特別な日であり、「いつもの騒擾」よりもかなり激しい事態となっている。
(笛の音が聞こえる・・・)