夏帆&岡田将生と言えばここ数年でも屈指の青春映画「天然コケッコー」のコンビだ。
とまあ、「青春映画」などと書いてしまったが、より正確には「キスと緑の映画」か。
日本映画でこれだけ色気のあるキスが見られる映画はそう多くない。
そして岡田将生は「重力ピエロ」で圧倒的な美しさと凶暴さを見せつけて、現在20歳前後の俳優としては最注目すべき存在だ。
このコンビが出演しているのであれば、多少軽薄そうなドラマでもチェックするのが当然ではないか。
などと無意味に力説してみたりして・・(美苦笑)。

で、「オトメン(乙男)」第1話だが、ひとまずは楽しめた。
「ブザー・ビート」のように笑いを取るべき意図ではないのにバカバカし過ぎて笑える、というのではなく、
笑いを取るべき意図のシーンで自然に笑えたという意味だが。
つまり金を払わず、暇つぶしに観るテレビ番組としては十分だということだ。
夏帆&岡田将生コンビの華やかさも、最近どんなテレビドラマで観るコンビよりもずっと上である。

しかし映画ファンとしては、ここで大きな葛藤に見舞われるのだ。
「オトメン(乙男)」はテレビドラマとして、他愛無くもおもしろい。
しかし我々は夏帆&岡田将生の素晴らしい映画作品を観てきたのではないか。
特に最近観たばかりの「重力ピエロ」で岡田将生の非日常的な美しさとスケール感にほれぼれしたばかりではないのか。
「オトメン(乙男)」のような軽佻浮薄なドラマを喜んで観ていていいのか。
これが米国であれば、映画であれだけのインパクトを残した若手俳優が再びテレビドラマに戻ることはないだろう。
ここに日本の映画⇔テレビの歪な関係性がある。
日本映画界が完璧に駄目だった時期のトラウマ。
その点は確かにハリウッドとは条件が違う。
けれど「日本はまあこんなもんだから仕方ないや」で済ましていてはいけない。
俳優たちがよりプライドを持って出演し、収入的にも満足がいくような映画界にするにはファンが「いい作品」にどんどん足を運ぶことだ。
そのために必要なのは「いい作品」を理解し、「いい作品」を鑑賞することを渇望するファンを増やすことなのだが。

決して人々は「いい作品」を望んでいないわけではない。
それは最近の吉高由里子人気の高さを見てもよく分かる。