●末尾ルコ「フェド・カップ2016でまたしても優勝したチェコとビロード革命、あるいは『存在の耐えられない軽さ』。

末尾ルコ「映画で知性と感性を鍛えるレッスン」

チェコと言えば、かつてはチェコ・スロヴァキアだった。
ソ連崩壊の際の東欧革命の頃、NHKの衛星放送は今よりもざっくりとした番組作りで、驚くべきスピードで情勢が変化する東欧諸国の自由化運動を連日長時間放送していた。

そう、フランツ・カフカを、ミラン・クンデラを輩出したチェコの大統領は2016年11月時点で、ミロシュ・ゼマン、首相はボフスラフ・ソボトカである。

チェコ・スロヴァキアの民主化運動は後に「ビロード革命」と呼ばれる。
しかしその後、チェコとスロヴァキアがぱっくり分離するとは想像がつかなかったし、それ以上に「チトーの」ユーゴスラヴィアが残酷極まりない内戦に突入するとも想像できなかった。

チェコ映画に対してはさほど大きな思い入れはない。
ミラン・クンデラ原作のフィリップ・カウフマン監督『存在の耐えられない軽さ』は傑作だ。
その映画化は、ダニエル・デイ・ルイス、ジュリエット・ビノシュ、レナ・オリンら俳優たちの魅力で楽しませてくれるが、原作とは別物だ。
とは言え、映画『存在の耐えられない軽さ』作品中、ソ連の戦車がプラハに侵攻してくる、それをカメラに収めようとするジュリエット・ビノシュ。
モノクロ画面の中、「ヘイ・ジュード」が流れる。
小説では味わうことのできない、戦慄的なインパクトだ。

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