●「プロ」と「強さ」の意味を考える。「ドン・フライVS高山善廣」をモチーフに。

末尾ルコ「格闘技とプロレスで知性と感性を鍛えるレッスン」


例えば「プライド」が最盛期だった時代の名勝負の一つとされる「ドン・フライVS高山善廣」。
これは試合スタートと同時に両者が互いに片手で相手の頭部をホールドし、もう一方の手でノーガードの顔面を殴り合うムーブで観客を熱狂の坩堝と化した。
が、わたしはこの試合、あまり好きではない。
リアルファイトにしては、「やり過ぎ」なのである。
リアルファイトに対してわたし、そして多くのファンが望むのは、「どちらが強いか」を明確にする試合であって、「ノーガードで殴り合う」ことが「どちらが強いか」と大きく関わるとは思えない。
高山善廣はプロレスラーであって、他にもリアルファイトの試合に挑んだプロレスラーは少なからずいるけれど、高山は最も「観客に見せる」ことを意識していた一人だろう。
ドン・フライの方は言うまでもなく、マーク・コールマンが登場するまでは「UFC最強」だったファイターだけれどとてもプロ意識が強い。
だから高山との試合は「あうん」の呼吸で「観客を沸かせる」殴り合いになったのだろう。
結果はリアルファイトの力ではずっと上のドン・フライ勝利となったが、わたしとしては苦笑いしながら観た試合だった。

ただ、高山のトップロープを大股で跨いでリングインする堂々たる姿はいつも素晴らしく、と言うのは、リアルファイトに挑戦するプロレスラーは試合前からナーバスになっていることが多かったので、あるMMAファイターが高山について「プロレスラーはリングに立つだけで華やかで羨ましい」という意味のコメントをしていたのが印象的だった。