●朝の時間に聴くに相応しい美しい旋律、オリビア・ニュートン・ジョン『そよ風の誘惑』。

末尾ルコ「音楽の話題で知性と感性を鍛えるレッスン」

例えば現在だと、「日本人の大部分が知っている洋楽女性歌手」と言えば誰になるだろうか?
ビヨンセやレディー・ガガ辺りがその候補に挙がるだろうけれど、ではビヨンセの歌そのものを聴いたことがある日本人はどのくらいいるだろうか?
「洋楽」「邦楽」という分け方はいかにも薄っぺらくて好きではないけれど、ここでは便宜上その言葉を使っている。
が、「邦楽」と書くと、どちらかと言えば、「日本の伝統音楽」的な世界を思い浮かべる人も多くいるだろう。
だから「J POP」という言葉が流通するようになったというのもあるだろうけれど、「音楽」という芸術をあまりカテゴライズし過ぎると、聴く前から(このジャンルはダメ)と決め付けてしまう人が多くなるということも常に再考されるべきだろう。

ところでかつてオリビア・ニュートン・ジョンというオーストラリア出身の歌手が日本で極めて大きな人気を獲得していた。
その人気ぶりは、オリビア・ニュートン・ジョンの来日コンサートを日本の民放が夜の時間帯に放送した事実からも窺えると思う。
ただ、オリビア・ニュートン・ジョンが世界的人気を獲得したのはハリウッドで『グリース』などの映画に出演してからで、しかし「歌」としては「それ以前」のものにとてもいいものが多い。
特に『そよ風の誘惑』は美しい戦慄の名曲で、しかもこのようなタイプの歌は近年ほとんど耳にしないからとても貴重だ。