「虫博士」と呼ばれていたわたしが、いつの間にかカナブンを不気味に感じる大人になっていた話。

末尾ルコ「自然との同調の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

保育園から小学2年生くらいまでの期間だと思うが、わたしはよく「虫博士」と呼ばれた。
今思えば、それほど虫に詳しかったわけではない。
もちろん「博士」と呼ばれるようなマニアックな知識を持っていたわけでもない。
ただ少々虫が好きだったというだけで、「虫博士」と呼ばれていたとは、ずいぶんご無体な話ではある。
今であれば、「サラ・ガドン博士」とか「山田姉妹博士」とか呼ばれたら、ちょっと嬉しいかなと。
自分が「虫博士」と呼ばれていた時期のことや子どもである自分の意識はかなり朧げだけれど、当時の出来事などを調べていくにしたがって蘇ってくる記憶もあるだろう。
もちろんそうした記憶が正確であるという保証もまるでなくて、そこが「記憶を辿るおもしろさ」の一端でもある。

しかし幼い頃に「虫博士」と呼ばれていたにもかかわらず、大人になってからはどんな意識の変化だろう、虫を忌避してきた、どちらかと言えば。
例えば、「カナブン」という幼少時代には最もよく見かける昆虫の一種を目にしても、(どうも気持ち悪い)と感じるようになっていた。

「気持ち悪い」感覚は一様ではないが、とても分かりやすい例としては、カナブンの腹の部分を(なんでこんなに不気味なんだ)と感じてしまう自分がいた。
(そもそもどうして足が6本もあるんだ?どうして6本の足がそれぞれに動いているんだ)・・・などと、やや原始的な不気味ささえも感じてしまっていた。

(虫などについての話題は、いずれそうした自然存在への興味復活の方向へ進むだろう)