●雑誌『ダ・ヴィンチ』8月号、プロレス特集について思い出しながら、『プロレスと世間』についてのプチ再考。

末尾ルコ「プロレスの話題で知性と感性を鍛えるレッスン」

三田佐代子という人はフリーアナウンサーで古舘プロジェクトに所属というが、わたしは特に知らなかった。
ただこのお方、『プロレスという生き方 平成のリングの主役たち』(中公新書ラクレ)という本を発表しており、このところプロレス関係の仕事が多いようだ。
しかも「昭和プロレス」でなくて、「平成のプロレス」を語る人としてのポジションができつつあるように見受けられる。
雑誌『ダ・ヴィンチ』8月号、プロレス特集でも三田佐代子がビギナーのプロレスファンに向けて、彼女なりの「プロレス観戦のイロハ」を語っているページがある。
そこでわたしの興味を強く引いたのが、三田佐代子が「プロレスに対する素朴な疑問」に対して一問一答形式で答える企画であり、とりわけ次の二つの質問に答えた部分だ。
言葉は『ダ・ヴィンチ』に載っているものとはいくらか変えているが、太太次のような意味の質疑応答である。


「なぜ相手の技を受けるのか」→「相手の力量を知るため」

「プロレスにシナリオはあるのか」→「ない。それは会場へ来て試合を観戦すれば分かる」

この内容の一問一答が載っているのはわたしにとって非常に興味深いことで、(ああ、まだこういう疑問がネックになっているのか)と、ある種の感慨さえ持つ。
それにしても昭和のプロレスに対して多くのファンは「格闘技」や「最強」の幻想を持っていたからまだしも、平成のショーアップされたプロレスに対して、今のファンはショーと割り切って観戦しているのではないのだろうか。
いずれにしても、「なぜ相手の技を受けるのか」→「相手の力量を知るため」だというのであれば、「試合の最初から終わりまで、相手の力量を知ろうとし続けているのか?」という疑問は出るし、「すべての試合ではないにせよ、プロレスの多くの試合はあらかじめ展開を決めている中で、それぞれレスラーたちができる限りのパフォーマンスを見せるもの」といった説明の方が、「臭いものに蓋」的表現よりも「ファンを育てる」観点からしてもいいのではないだろうか。