●末尾ルコ選定「現在の演歌トップ5人」と、その域に迫る市川由紀乃の表現力。

末尾ルコ「音楽の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

演歌を愉しみ始めて数か月でどうこう言うわたしです(←山田姉妹「水色のてがみ」風に)。が、それはそれ、気づいたことは言います、現在の演歌状況とはどのようなものか。
演歌界には「大御所」と見做される人たちがいて、その中でも常に文句なしで「聴きたくなる」のが、

五木ひろし
細川たかし
石川さゆり
八代亜紀
坂本冬美

であって、坂本冬美を「大御所」とするのは年齢的にもまだ早いかもしれないが、既に不動にして唯一の歌唱とステージングが際立っているので入れてみた。
個人的にこの中で、「最も観たい、聴きたい」のは坂本冬美だ。
その坂本冬美以外の何物でもない声、強弱自在の歌唱、そして指先から爪先まで計算されたその動きは洗練の極みであって、間違いなく日本の歌謡史において、誰も到達したことのない高みまで来ている。
細川たかしは、普段は(このおじさん、酔っ払ったまま出てきてるのか?)という風情だが、『イオマンテの夜』や『オ・ソレ・ミオ』など、豊かな声量を必要とするスケールの大きい歌となれば比類ない歌唱をする。
「観客が圧倒される」・・・そのような歌いっぷりなのだ。
八代亜紀は何と言っても、その特別な声、ブルーズやソウルに近接する魂を感じさせる歌唱、そして登場するだけでステージが輝き始めるカリスマ性とエンターテイナーぶりである。

これら歌手については今後もリスペクトを込めてお話していきたいが、では、「大御所の次」に位置する歌手は現在誰だろう。

わたしの感覚では、

市川由紀乃である。

若い頃の市川由紀乃の写真を見ると、実に地味で素朴な感しか受けないが、現在はもう、坂本冬美とは違った意味で極めて洗練されており、演歌歌手として弱点になりかねない170を超す身長も、「ステージ上の美」と化している。
そして何よりもその歌唱。
美しく、繊細で、時に強く、強さの中にも弱さが含まれているという、正に技術も表現力も最高度に磨かれてきている。
今、そしてこれからの市川由紀乃を聴き逃す手はない。