●山田姉妹が「ふるさと」を歌った2017年NHK『思い出のメロディー』で、高橋真梨子が「ジョニィへの伝言」と「五番街のマリー」を歌う。

末尾ルコ「音楽の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

山田姉妹が島津亜矢とともに「ふるさと」を歌うということで初めてじっくりと鑑賞してみた2017年NHK『思い出のメロディー』は、(どうかなあ・・・)という要素もちりばめられていたとは言え、非常に見どころ、聴きどころも多い番組となっていた。
一番驚き、嬉しかったのは、高橋真梨子が何と、「ジョニィへの伝言」と「五番街のマリー」を歌ったことであり、高橋真梨子がこの2曲をテレビで歌う姿をまた見られるとは思っていなかっただけに、極めて嬉しい驚きだった。
調べたら、「五番街のマリー」は2015年の「第66回NHK紅白歌合戦」で高橋真梨子によって歌われているというけれど、その年にはわたしは紅白をまともに観てはいなかったので。
しかしどちらの歌も1973年に発表されているが、「ジョニィへの伝言」がオリコン24位が最高、「五番街のマリー」はオリコン18位最高と、どちらも一度もトップテンにさえ入ってないのには驚いた。
この2曲が発表された年、わたしは頑是なく紅顔のキッズだったが、それでもペドロ&カプリシャスがテレビで歌う姿は強く印象に残っており、高橋真梨子の歌声、黒く長いストレートの髪、感傷的でありながら感傷に流されることのない歌詞とメロディをすぐに覚えた。
『思い出のメロディー』の中ではありし日の阿久悠のインタヴューも映し出され、幾多の歌詞を作ってきたけれど、一番好きなものはと問われれば、「ジョニィへの伝言」を選ぶと語っていた。
わたしは少なくとも十代後半くらいまでは歌謡曲も、そしてもちろんその歌詞も馬鹿にしていたところがあって、一番の売れっ子で誰もが知る存在だった阿久悠でさえも、(噴飯物の歌詞を作り散らかすおじさん)くらいに思っていた。
その認識を変えたのが思想家吉本隆明の評価で、別に吉本隆明の一言一句を金科玉条のように奉るほど崇拝していたわけではまったくないが、阿久悠と中島みゆきの歌詞に関しては凄いレベルであるという意味の発言をしていて、いかに崇拝しておらずとも、「戦後最大の思想家」と評され、詩人でもある人物の言葉には目から鱗が落ちる思いではあった。