●棚橋弘至はなぜロン毛なのか?あるいは、井上貴子、紫雷イオ、そして馬場のロン毛は可能か?

末尾ルコ「プロレスの話題で知性と感性を鍛えるレッスン」

棚橋弘至の髪の毛は長い。
しかも金色と茶の入り混じった色をしたロン毛である。
なぜ棚橋弘至はそんなロン毛なのか?
考えてみれば、多くのスポーツの試合中、ロン毛は不利な状況を生み出す原因となりかねない。
だからUFCなどリアル格闘技にロン毛のファイターは滅多に見られない。
普段は髪の長い女子MMAファイターであっても、試合前にピッチリと纏め、決して試合の障害とならない状態にしておく。
女子テニス選手は髪の長い人が多いが、もちろん試合中はしっかりとポニーテールにするなど、邪魔にならないスタイルにしている。
ところがプロレス界にはロン毛が多く、女子プロレスラーに至っては、ほとんどがロン毛である。
すべての試合をチェックすることは不可能だから、「今まで見た範囲」での話になるが、ロン毛の女子プロレスラーが試合のために髪を纏めた姿など見たことがない。
ついでに触れておけば、わたしは元全日本女子の井上貴子のロン毛を振り乱して暴れる姿が好きだった。
井上貴子は決してプロレスが上手なタイプではなかったが、下手な部分が多いだけに、ロン毛を振り乱して不器用に暴れる姿に観応えがあったのだ。
現在女子レスラーの中ではかなり人気が出ているという紫雷イオも外見や体形などは井上貴子と共通点がある。
ただ、紫雷イオの方がずっと器用に技をこなすし、引き出しも多く、懐の深いプロレスをするけれど。

しかし思えば、井上貴子や紫雷イオがショートカットだったとしたら、彼女たちの試合の魅力が何パーセントか減退するのは間違いない。
この前は「ブロンドヘアを振り乱すレスラー」の系譜についてお話したが、髪の毛も試合の盛り上げるための重要な要素であり、棚橋弘至のロン毛も当然ながらその流れの中にある。
もちろん誰でもロン毛にして振り乱せばいいというわけではない。
ジャイアント馬場がロン毛にして振り乱そうものなら、一気に「超ド級の怪奇レスラー」誕生である。
そして男子レスラーの場合は、「髪がない」というケースも多くあり、そうなると「剃り上げて怪奇レスラー」という大きな流れがあるのだが、その点についてはまたの機会にしよう。