●現在「映画的演技」世界屈指の名手、ヴァンサン・ランドンの『ティエリー・トグルドーの憂鬱』。

末尾ルコ「映画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

今までにも何度か書いているけれど、フランスの名優ヴァンサン・ランドンの「映画的演技」が実に心地いい。

1959年7月15日生まれのヴァンサン・ランドンは、現在名実ともにフランスを代表する俳優の一人であり、世界的に見ても、「映画的演技」の名手の一人だと言える。

ではヴァンサン・ランドンのどこがとりわけ「映画的演技」なのか。

簡単に言えば、表情だけで、時には目の表情だけで、実に細やかな感情表現ができる点である。
カンヌ国際映画祭で男優賞、セザール賞で主演男優賞をヴァンサン・ランドンにもたらした『ティエリー・トグルドーの憂鬱』でも、台詞は極めて少ない。
しかし鑑賞者はヴァンサン・ランドンの「憂鬱」や「憤懣」に釘付けになるわけだ。