●クラシックプロレス技の奥深さを知ろう!決して男性の大事な部分とは関係ない「チン・ロック」に関して。

末尾ルコ「プロレスの話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

「チン・ロック」というプロレス技がある。
しかし決して男性の股間に存在する「ちん」を「ロック」する技ではない。
プロレスにおいて、件の「ちん」への攻撃は反則となっている。
よしんば反則でなくとも、本当に「ちん」をロックしたら恐るべき事態が生じるだろう。
だから「チン・ロック」の「チン」は、男性の股間で時に猛々しくそそり立つ件の「ちん」ではない。
「チン・ロック」の「チン」は、英語の「chin」つまり概ね「下顎」を表している。
しかし今日、「chin lock」で検索すると、「ヨガのテクニック」の情報が多く出る。
ヨガにおける「チン・ロック」についてわたしはまだ明るくはないが、もちろんここで語られるのはプロレス技の「チン・ロック」である。

「チン・ロック」・・・わたしの理解では、レスラーがそれぞれの手で対戦相手の下顎と頭部を押さえ、相手の顔は正面に向けたまま、ぐうッと頭部を下向けに押し、下顎を上向けに押し上げて捻じり上げる技である。
ところが「チン・ロック」の画像の中にはスリーパーホールド気味に自分の腕を相手の下顎に回してホールドしている写真も少なくない。
しかしここはわたしの理解である前者の「チン・ロック」の体勢について述べよう。

この「チン・ロック」は普通、かなり巨体のレスラーが得意とする技である。
プロレス草創期にはこの技によってギブアップを奪うこともあったかもしれないが、少なくとも70年代以降は試合の中盤辺りで巨体のレスラーが自分より小さなレスラーにかける痛め技として使われていた。
実際問題、でっかい相手に頭と顎を持たれ、ぎゅうぎゅう捻じられたらそりゃあキツイものである。
もちろんこの技が現在のMMAで使えるかとかいうことは別の話だ。
ではわたしがなぜこの平成の世の中に「チン・ロック」の話題を持ち出したかと言えば、一番の理由は「思いつき」だけれど(笑)、人間、「思いつき」から多くのことを得られる場合もあるのだ。
そしてこの一見地味な「チン・ロック」、プロレス技としては実によくできている。
と言うのは、技をかける方もかけられる方も、はっきりと正面の観客に顔を見せつけ、かけられるレスラーの苦悶の表情、かけるレスラーの「どうだ」と言わんばかりの恐ろしげな表情が同時に映像や写真としても残る仕組みになっているのだ。
一級のレスラーが「チン・ロック」をかけるその姿は、あたかも千両役者が見得を切る姿にも共通している。
クラシックなプロレス技とは、かように奥深いものなのである。