●わたしが「家おでん」の具材として年月を超えて「ゆで卵」に成功した話。

末尾ルコ「食の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

おでんに入れるものと言えば、卵である。わたしが店でおでんを買う時に卵を抜かすことはあり得ない。
ところが家でおでんを作る時にはまだ卵を入れたことがなかった。
いや、わたしの「家でおでん」歴はまだ浅い。せいぜいがこの数年以内に始めた程度だろう。「おでんくらいどうして家で作ってなかったのか」とあなたは首を傾げるだろうか。
実はわたしも首を傾げているのだが、自分でもなぜ作っていなかったのか説明できない。
とにかく事実として、わたしが「家おでん」を作り始めたのはここ数年程度なのである。
では次の問題に移ろう。
「おでんと言えば、まず卵」であるはずのわたしであるのに、なぜこの2017年10月まで「家おでん」に卵を使わなかったのか。
この解答は明確である。
「ゆで卵を作るのが面倒くさかったから」だ。
ゆで卵をおでんに入れるには、おでんを煮込むメインの鍋とは別に、「ゆで卵用の鍋」でゆで卵を作らねばならない。
もちろんメインの鍋でおでんの総体を煮込み始める前にゆで卵を作っておくということはできるけれど、いずれにしても「メインの鍋でおでんを煮込む」というアクションとは別のアクションが必要である事実に変わりはない。
無限に時間が使えるのであれば、どんな手の込んだ料理だってやってみよう。しかし一人の人間に与えられた時間は無限で話し、それ以前にわたしが持っている金銭も限られたものだ。
いや、別に六個入り卵くらい買えないと述べているわけではない。そのくらいわたしにだって買えるさ。
ああ、買えますとも。
ただ、わたしは少なくとも二〇年間はゆで卵を作ったことがなかったのである。
そして二〇年以上前にゆで卵を作った時の思い出と言えば、茹でている途中で殻が割れて卵白が噴出する、あるいは殻をむくときに卵白の表面を覆う薄皮きれいの取れず、表面がずたぼろになってしまったゆで卵ができてしまう、時に卵黄の部分まで露出して、落胆の溜め息をつかざるを得ないとか。
そう、わたしにはゆで卵に関してトラウマ的思い出の数々があったのだ。
それら失敗はなぜ生じていたのか?
簡単なことだ。
「ゆで卵の作り方」について曖昧なままやっていたからだ。
今回は違う。
「ゆで卵 作り方」で検索。
もちろん検索結果を鵜呑みにはせず、「より正確な情報を抜き出す。
そしてどうだ。
卵白の表面がつるんとした見事なゆで卵が仕上がった。
(ふふふ・・・)、おれはピアズリー的月光を背中に感じながら、ほくそ笑んだものなのさ。

ちなみにわたしが家おでんでよく使う具材は、

大根
昆布
竹輪
てんぷら(さつまあげ)
ジャガイモ
人参
コンニャク

などであり、これらを必ずしも大ぶりにカットしているとは限らない。