●加山雄三が高峰秀子と禁断の愛を紡ぐ『乱れる』の話から、前川清の心身の若さを語る。

末尾ルコ「音楽と映画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

加山雄三は、1937年生まれである。
前川清は、1948年生まれである。

実はわたしは、加山雄三の若大将シリーズをまともに鑑賞したことがない。
どうやらそのような偏った態度は映画ファンとして褒められたものではないと気づいた今日この頃、今後は機会を見て鑑賞するとして、映画俳優としての加山雄三で現在まで最も印象的なのは、監督 成瀬巳喜男、脚本 松山善三、主演 高峰秀子という映画史上問答無用の顔ぶれによる『乱れる』である。
『乱れる』は先行して放送されたテレビドラマを映画向けに脚本を書き直して制作されたのだというが、100分足らずの作品ながら、観応えたっぷり大満足はさすが成瀬巳喜男である。
高峰秀子は夫の弟に対して恋愛感情を抱く妻の役であり、まさに大女優高峰秀子の独壇場、女性の複雑な想いを表現させれば並ぶものなしであり、絵空事にして益体もないこの頃のティーン向け恋愛映画を観ている方々に対しては、「さあ、この映画館で『君の名は。』をやっているよお~」などと騙して入館させた上で縛ってしまい、高峰秀子主演映画を鑑賞させる・・・なんて『時計じかけのオレンジ』なことは犯罪なのでやってはいけない。
それはさて置き、『乱れる』の中で高峰秀子と禁断の恋愛模様を描く男が若き日の加山雄三であって、ブロンズ彫刻のごとく彫りの深い顔だちと現在の加山雄三はなかなか結び付き難いのであるが、その獰猛なセックス・アピールで世界中の多くの女性たちを虜にしたマーロン・ブランドのとてつもない太り方「と比べたらまだましとでも書いておこう。
その若き人は異なり、お目出たいキャラクターで現在もスターの雰囲気を充満させている加山雄三だが、この10月、『新BS日本のうた』で、前川清とともにスペシャル・ステージを務めた。
「カラオケでは演歌しか歌わない」と豪語する加山雄三だけど、なにせ持ち歌は「一本調子」が売り物であるから、演歌を歌わせたら抜群に下手である。
しかしそこは「大スター」加山雄三だ。
おめでたい雰囲気と、前川清の絶妙のトークで会場は盛り上がる。

そしてわたしが今回最も強調したいのは、この前川清の驚異的コンディションなのだ。
1948年生まれにして、若き日とまったく変わらないスラリとしたフォルム。
腕や脚もスラリと長く、スーツの似合うことと言ったら。
顔の輪郭もまったく変わってないし、肌質もとてもいい。
さらにわたしが最も「素晴らしい」と感じるのが、もちろん若き日のままの歌声もそうだけれど、随所に輝く「頭の回転の速さ、柔軟さ」だ。

1948年生まれで心身これだけの若さ・・・前川清は世界に誇れる日本の歌手の一人である。