●谷崎潤一郎の短編「柳湯の事件」・・「ヌルヌル」触感の極致。

末尾ルコ「文学の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

谷崎潤一郎の短編「柳湯の事件」は歓迎すべからざる触感が生き生きと伝わってくる作品で、その「触感」とは「ヌルヌル」である。
あるいは、「ぬめぬめ」とか「ぶにゃぶにゃ」とか、様々な言い方があるだろうが、要するにそうした通常は嬉しくない「触感」を表現し、これほど的確な小説は他に思い浮かばない。(世界には無数の小説があるので、「わたしが読んだ範囲では」でしかないけれど)
そしてその「触感」表現がクリアな映像として脳内で焦点を合わす・・・「柳湯の事件」は、そんな魅惑の短編小説なのだ。