●あなたは「出たり引っ込んだり」と聞いて、何を思い出す?あるいは『ガメラ対大魔獣ジャイガー』からジャンヌ・ダルクの鎧。

末尾ルコ「日常生活の話題からどんどん展開させて、知性と感性を鍛えるレッスン」

(台風に殺意を抱いても詮無いことである)
 そんな真実にぶち当たったわたしであるが、徐々に高知も寒くなってきた事実には突き当たらざるを得ない。
(寒くなってきたなんて気のせいだろう。だって心地のいい秋なんてまだ来てないのだもの。今の気温はまずまず過ごしやすいし、台風22号は近づいてきているとは言え、21号の後は珍しくいい天気が続いている。そうだ、あと1か月くらいこの気候のままであれば。22号だって逸れてくれるかもしれないし)
 なんていう甘っちょろい期待も出たり引っ込んだりするが、(いかん!おれは甘っちょろい人間であってはならないのだ!)と自らの立ち位置をあらためて確認したわたしです(←山田姉妹「みずいろの手紙」風に)。
よし、窓を開け、叫ぼう。

「我に七難八苦を与えよおおおお!」

荒波がざっぷ~ん!
と行きたいところだったが、そんな大声、近所に迷惑だものね、ということでやらなかったのでアル。
ところで「出たり引っ込んだり」と書いたことで思い出したのだが、と言うか、「出たり引っ込んだり」というフレーズ、ちょっといいでしょう。
「出たり引っ込んだり」。
何か思い出しました?

というわけで、わたしが思い出したのは、

「亀」である。

子どもの頃、亀はまごうことなきヒーローだった。
だからゴジラよりガメラが好きだったわけでし。
子どもの頃、親に連れられて行った映画館で『ガメラ対大魔獣ジャイガー』を鑑賞した衝撃はいまだ新鮮である。
恐るべき大魔獣ジャイガーの光線(?)により、人間が白骨化する。
「生きた人間」が次の瞬間に「白骨」になる映像は、子どもにはトラウマ的刺激だった。
(ああ、人間って、結局骨なのね・・・)という無常感が頑是ない時代のわたしに芽生えた・・・と書けば話を盛り過ぎになるけれど、あれは怖くて正視できなかったのである。
『ガメラ対大魔獣ジャイガー』の公開が1970年か・・・ふうむ。

で、「亀」なのだが、やはりあの甲羅、その生まれたままに鎧を纏っているかのごときその姿。
そして鎧の中に頭も手足も「出たり引っ込んだり」できるなんて、そりゃあ子どもにはめちゃめちゃカッコいい存在ですぜ。
鎧を纏った永遠のヒロイン ジャンヌ・ダルクも、もしも頭手足が「出たり引っ込んだり」できていたら、ゆめゆめ異端裁判から火刑へと至る運命にはならなかったのに・・・というのは冗談でしゅ。
ちなみにわたしはジャンヌ・ダルクのファンで、フランスでは右にも左にも政治利用される彼女だが、そうした文脈は別にして、まさに「世界史の中の奇跡」の一つだと考えている。
ここで言う「奇跡」とは、「ジャンヌが天使のお告げを受けた」などという逸話をそのまま信じるという意味ではなく、

「想像もつかないできごとが本当に起こった」

という意味の「奇跡」である。

というわけでまたしても話法は横道にそれてしまったが、もう一度言わせていただければ、

「わたしには、亀が最高のヒーローだった時代があった」

という事実だ。